機械設計技術者のみなさんは、たくさんいろんな計算をされていることと思います。
強度計算、動力計算、寿命計算や性能計算など、設計はこれらの計算結果に基づいて形状、部材の材質やサイズ、モータ容量などを決定していきますので計算は必須ですね。
現在はインターネットでいろんな計算サイトが公開されているので、理論や公式なんか知らなくても誰でも簡単に計算ができてしまいます。
また、CADソフトで簡単な強度計算ができるようなものもあります。
さらに、3DCADのオプションとして解析ソフトを追加することで、解析専門技術者でなくても詳細で精度の高い解析が容易にできるものもあります。
みなさんもきっとこれらを便利に活用されていることと思います。
そんな便利な世の中ですが、改めて設計で必要な計算は簡単な内容でよいので、手計算でできるようにしておくことが大切ですよということをお伝えしたいと思います。
この記事は、機械設計初心者や中堅技術者のみなさんに参考にしていただければと思います。
それではどうぞ。
構造強度の勘
手計算といっても、電卓などはもちろん使います。
手計算ではないものとは、解析プログラムや数値を入力すれば回答だけが示されるようなWEBサイトのことを言います。
これらは確かに時間短縮になり効率的ですが、技術者としての勘が身につかないという弊害があります。
技術者の勘とは、どこの部分がどのように弱いのかが構造を見た瞬間にだいたいわかるという能力です。
その反対に強すぎる部分があれば、それもわかります。
つまり、極端に弱い部分や強い部分がわかるようになって、強度バランスが適切かどうかを見抜くことができるようになります。
そして、弱い部分の補強や過剰に強い部分の改善をどのようにすればよいかという方針も定めることができるようになります。
手計算をするだけで、こんな勘:能力が身につくのかと疑われるでしょうか。
ご安心ください、間違いなくに身に付きます。
強度計算は、引張応力、圧縮応力、曲げ応力とせん断応力の式を覚えておくとよいでしょう。
それぞれの公式は、過去の記事で紹介していますので確認してみてください。
どれもすごく簡単です。
曲げ応力を算出するには、曲げモーメントと断面係数も含めて計算したり調べる必要があるのでちょっと面倒です。
でもこの曲げ応力が強度計算で多く使うことになるので、是非習得するようにしましょう。
所要動力の勘
動力計算についても以前、記事にしていますので基礎と応用をそれぞれ参照ください。
動力計算も強度計算と同様に、手計算で確認できるようにしておくと現場などでトラブルが発生した時など、すばやく判断できるようになります。
例えば、モータが過電流でサーマルトリップする事象があったとしましょう。
その過電流の原因がモータの容量不足によるものなのか、機械調整不良で可動部分などの抵抗によるものなのかが判断できます。
計算結果に大きく影響している要素を把握できるため、問題が起きた時に原因となる部分を素早く特定できるような勘が身につくというわけです。
荷重伝達のイメージによる最適設計
複雑な構造のものについて強度計算や動力計算を行う場合、手計算だと簡略化した計算モデルをいくつか設定しないと計算できません。
例えば、柱と梁の門型構造のものに、梁の中央に鉛直方向の集中荷重が作用した梁と柱の強度について考えてみましょう。
この場合、柱と梁を分けて個別に計算すれば簡単に計算することができます。
梁は曲げモーメントを計算して曲げ応力を算出すればよいでのす。
梁の両端支持条件は、柱と溶接などで接合されていれば固定とし、ボルト固定であれば安全を見てピンとすればよいでしょう。
柱には圧縮荷重が作用します。
柱に梁が溶接接合されているのであれば、梁の両端に作用する曲げモーメントが柱にも作用するため、圧縮と曲げの両方の応力を受けることになるのでこれらを足し合わせた応力で評価すればよいでしょう。
門型構造のものには、公式があって本来であればその公式で計算することが望ましいです。
しかし、計算書などの正式図書ではなく簡易な確認程度であれば、このような簡単なモデルにして計算する方が早く判断できるので効率的です。
このように手計算を重ねていくと、計算モデル化や計算する部分を決める際に、力がその部分にどのように伝わってきてどんな荷重が作用しているかをイメージする能力が養われます。
荷重伝達のイメージができると、強度を確保した部材や形状を適切に設計できるようになるということです。
まとめ
強度計算や動力計算などの設計計算では、手計算が重要であることをご紹介しました。
その理由は、問題などが生じた時に勘が働くようになり、計算結果:設計根拠に基づいた適切な対応や方針を定めることができるようになるからです。
手計算とは、電卓やエクセルなど使ってはいけないということではありません。
条件を入力すると、答えだけを示すような解析プログラムやWEBサイトは手計算とは言えません。
しかし、これらを使うことを否定はしません。
有効に使えば便利で速いからです。
ただし、設計の勘がない段階で多用すると、計算ミスに気が付かなかったり、問題が発生した時に適切に対応できないなどの弊害があるでしょう。
計算できるWEBサイトには、答えを表示するだけではなく式を掲載しているところもあるので、そのようなサイトであれば有益でしょう。
そして、その式をよく理解してどの項目数値を変更すれば、結果に大きく影響するのかを把握することが重要です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。