強度計算 引張 小学生でもできます

機械設計

機械設計に携わっているみなさんは、日々強度計算を実施されていることと思います。
でも中には、今までと同じような部品で使用荷重とかが規定されていたので、
特に計算していませんという方や、計算の方法や計算してもその結果が
妥当かどうかわかりませんという方もおられるんじゃないでしょうか。
計算や妥当性を判断するのは、先輩や上司にお任せというみなさん。

今回は、そんな強度計算なんて特にやったことないという方や、
できるようになりたいんだけど、なんだか難しそーだし無理かもと思っている方向けにお届けしたいと思います。

まず、最初の基本的な引張についてご説明します。
引張は、「ひっぱり」と読みます。
そして今後、曲げやせん断などについてもお届けしていきたいと考えています。

それではどうぞ。

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引張荷重

まず、評価したい部品や部位にどれくらいの引張荷重が作用しているのかを明確にします。
荷重の単位は(N)です。ニュートンと読みます。

または、これくらいの質量のものをこの部品で吊り上げたいと設定します。
質量の単位はkgです。キログラムと読みます。
質量の場合、単位をニュートンに変換したいので、
質量に重力加速度:9.8(m/s^2)をかけます。
質量1kgの場合だと、その荷重は、1kg×9.8=9.8(N)となります。

これで引張荷重を設定できました。

断面積

評価したい部品で、どの部分に引張荷重が作用していて、その中で一番弱い部分の断面積を算出します。
ここで、一番弱い部分を見つけるのが設計者の技術力になります。
まあ、そんなに難しいことではありません。
見た目でわかるもんだと思います。
逆に、荷重が作用している部分がわかりにくいという部品や構造は、
一般的によい設計と言えません。
構造や形状が複雑だからわかりにくいんだと思います。
構造や形状は、シンプルに設計するようにこころがけましょう。

それでも一番弱い部分がはっきりわからなければ、同じような弱い部分を全部計算すればいいだけです。
それで解決です。

引張応力

引張荷重と弱い部分の断面積がそろえば、後は割り算すればいいだけです。
引張応力は、引張荷重を弱い部分の断面積で割るだけです。
それだけです。
簡単です。
計算に技術力は不要です。

許容応力

ここで、先ほど計算した引張応力が妥当かどうかが判断できます。
その判断方法は、計算した引張応力とその部品材料の許容応力とを比較することです。
引張応力が許容応力より低ければ問題ありません。
その逆で、引張応力が許容応力を超えていれば強度が弱く、壊れる可能性があります。
この許容応力を設定することは少し知識と経験が必要ですが、簡単に設定することができます。
許容応力について、ご紹介している記事がありますので、こちらをご覧ください。

ここでは、簡単に代表的な許容応力を以降に2種類ご紹介します。
・一般構造用圧延鋼材:SS400
一般的に建築構造物や機械構造設備などで最も多く使用されている材料です。
似たような材料も多くありますが、だいたい許容応力は同じです。
・物を吊る部品や構造の場合の許容応力は、66MPa=66N/mm^2
SS400の最小引張強さは、400MPa=400N/mm^2です。
これに安全率:6で割った値が上記の66MPaです。
安全率:6の根拠は、労働安全衛生規則で示されているワイヤーロープの安全率を引用しています。

・上記以外の部品や構造の場合の許容応力は、133MPa=133N/mm^2
この場合の安全率は、3倍を見ています。
これは主に静荷重を想定したものです。
動荷重や繰返し荷重、及び衝撃荷重などの場合はもっと大きく安全率をとる必要がありますので注意してください。

・ステンレス鋼:SUS304
ステンレスもSS400 と同様にいろんな所に広く使用されています。
ステンレスといえば、ほとんどがこのSUS304です。
こちらも似たような材料が多くありますが、だいたい許容応力は同じです。
SUS304の耐力は、205MPaです。
SS400の降伏点は、235MPaです。
耐力と降伏点は、だいたい同じような強さを示したものです。
ここで、SUS304は、SS400の約87%の強さになるので、SS400について前述した値の一律87%でよいでしょう。
よって、
・物を吊る部品や構造の場合の許容応力は、57MPa=57N/mm^2
SUS304の最小引張強強さは、520MPa=520N/mm^2です。
これに安全率:6で割った値は86MPaになります。
どちらを採用するかは設計者次第です。

・上記以外の部品や構造の場合の許容応力は、115MPa=115N/mm^2
安全率:3の場合だと、173MPaになります。
しかし、規格規準によると、SUS304の長期許容応力は136MPaになるため、173MPaは採用できません。
よって、115MPaが妥当な値です。

まとめ

引張荷重、引張応力、許容応力についてご紹介しました。
ちょっとした計算と許容応力さえ知っていれば、簡単だということがご理解いただけたと思います。

普段のここちょっと確認しとこうかな、という程度の強度計算はこれで十分です。
検図などで先輩や上司から、ここの強度大丈夫?確認した?
程度の質問には十分対応できます。

ただし、技術資料として残す計算だったり、社外に提出する正式な計算書の場合は、このままでは使えませんのでご注意ください。
あくまで、何も計算していないのではなく、いちおう強度評価しましたと言えるレベルです。

ここでご紹介した許容応力の根拠をご説明しておきます。
・吊り構造物
労働安全衛生規則のワイヤーロープに基づいて、安全率を6にして設定しています。

・吊り構造物以外
建築基準法、鋼構造設計規準、機械工学便覧などに基づいて設定しています。
ここについては、私の主観が大いに入っていますので、いろんな考えや状況によって異なることがあることにご留意ください。

ここまでやっていれば、最終の判断は先輩や上司がしてくれます。

あなたが最終判断者であるならば、この記事の情報だけでは残念ながら不足しています。
さらに深く検討した許容応力の設定が必要です。

深く検討する場合の内容は、また別の記事でご紹介したいと思います。

最後までお読みくださり、ありがとうございました。

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