今回は鋼材の許容応力について書いてみます。
この記事は、機械エンジニアの初心者から中級者の方に向けた内容です。
強度計算をやってはみたものの、計算結果の値が問題ないのか、問題ありなのか。
そのような問題に悩んでおられる方々にお伝えしたいと思います。
よければ参考にしてみてください。
許容応力とは
力が部材にかかると、部材はその力に耐えようとします。
その耐えようとする力を応力といいます。
部材にかかる力が、部材の耐えられる限界を超えたとき、部材は破断します。
破断とは、ちぎれたり折れ曲がったりすることです。
そうならないように、部材にどこまで力がかかってもいいか、あらかじめ設定する応力を許容応力といいます。
応力の値は、力を部材の断面積で割ったり、曲げモーメントを断面係数で割った値になります。
曲げモーメントなどについては、別の記事で説明したいと思います。
規格、基準
許容応力は、主に以下の規格や基準などで定められています。
・日本産業規格(JIS)
・建築基準法施行令
・鋼構造設計規準
・安全指針
・機械工学便覧
上記の規格、基準などでは、許容応力ではなく、安全率で示している場合もあります。
安全率とは、一般的に破断応力を発生している応力で割った値です。
例えば安全率が2の場合、発生した応力が破断応力の半分以下であればOKになります。
よく使われるSS400について、規格、基準などでどのように許容応力が示されているのか紹介してみます。
・日本産業規格(JIS)の場合
JISでは、圧力容器において許容応力の値を設定していますが、その他の一般機器では設定していません。
SS400 の場合、最小引張強さと降伏点が示されています。
SS400 の最小引張強さは、\(400N/mm^2\) です。
最小引張強さとは、それ以上の力で引っ張ると破断する値です。
SS400 の降伏点は、鋼材の厚さが16mmを超えて40mm以下の場合、\(235N/mm^2\) です。
降伏点とは、鋼材が弾性変形の範囲を超える境界のことです。
この降伏点を超えると、鋼材は塑性変形といってかかっている力を取り除いても元の形に戻らない状態になります。
SS400 の情報はここが便利です。私もよく利用させていただいています。
・建築基準法施行令の場合
ここでは許容応力を算出する基となる基準強度というものが示されています。
SS400では鋼材の厚さが40mm以下の場合、\(235N/mm^2\) です。
この値は、JISで示されている SS400 の降伏点になります。
この基準強度:降伏点を基に長期許容応力と短期許容応力を設定しています。
SS400 の短期許容引張応力は、\(235N/mm^2\)
SS400 の長期許容引張応力は、\(235/1.5≒156N/mm^2\) (少数第一位切捨て)
・鋼構造設計規準
基本的に建築基準法施行令と同じです。
・安全指針
こちらも建築基準法施行令を基にして、各分野において安全率などを設定しています。
・機械工学便覧
ここで、一般機器に向けた許容応力を参考値として記載しています。
SS400 は軟鋼として分類され、安全率や許容応力を以下のように示しています。
安全率
静荷重:3
くり返し荷重:5
交番荷重:8
衝撃荷重:12
安全率を加味した引張許容応力\((N/mm^2)\)
静荷重 :88~147
繰り返し荷重:58~98
交番荷重 :29~49
まとめ
ここでは、鋼材SS400の引張許容応力について主に記載しました。
やはりJISが基本となって、建築基準法施行令やその他の規格、基準に展開されています。
一般機器の場合は機械工学便覧を基に許容応力を設定するとよいでしょう。
しかし、繰り返し荷重や衝撃荷重は一様には言えませんので、試験や検証で問題がないことを確認するようにしましょう。