応力とたわみ

機械設計


みなさんは設計した構造物に対して強度を検討する際、たわみを考慮されていますでしょうか。
引張応力や曲げ応力などは、許容値以下かどうかについて検討評価されていると思います。
でも、たわみについてはどうでしょうか。
応力さえ満足していれば、問題ないだろうとたかをくくっていないでしょうか。
たわみを甘くみていると、思わぬ落とし穴にはまってしまうかもしれません。

今回は、応力は許容値以下で問題ないけれど、たわみが大きく現れて問題になるような設計事例についてご紹介したいと思います。

たわみについて、これまでほとんど検討されていなかった設計初心者や中堅のみなさんに参考にしていただければと思います。

それではどうぞ。

まず、たわみとは上の図のように荷重によって変形した量のことを言います。

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たわみについて制限している規格・規準

まず、たわみの許容について示している規格規準は2種類あります。
・建築基準法
・鋼構造設計規準

です。
建築基準法では、主に建築構造物を対象としています。
木造、鉄骨造、鉄筋コンクリートなどです。
鋼構造設計規準は、鋼を使った構造物を対象としています。
なので、機械設計で主に活用するのは鋼構造設計規準になります。

ここで、建築基準法に違反すると法令違反で処分されますが、鋼構造設計規準は法令等ではないため、必ず守られなければいけないというものではありません。
しかし、機械設計において一般的に採用されている規準なため、これに基づいていない場合は相応の根拠:問題ないと示すことができる試験結果や論文資料等を持っておく必要があるでしょう。

たわみ許容値

前述した鋼構造設計規準では、以下のように記載されています。
・通常:1/300 以下
・片持ち梁:1/250 以下
・クレーン走行梁(手動クレーン):1/500 以下
・クレーン走行梁(電動クレーン):1/800~1/1200 以下

設計事例:たわみが大きく発生する構造

応力が大きくないため、たわみも大きくないだろうと思い込みがちな構造をいくつかご紹介したいと思います。

ロングスパン構造

たわみ全体にいえることですが、たわみはスパンの3乗で影響します。
よって、応力は小さいのにスパンによってたわみが大きく現れることがあります。
たわみの計算式をいくつかご紹介します。

・両端ピン支持梁、集中荷重
\(\delta=PL^3/(48EI) \)

\(\delta:たわみ(mm)\)
\(P:荷重(N)\)
\(L:スパン(mm)\)
\(E:縦弾性係数(MPa=N/mm^2)\)
\(I:断面二次モーメント(mm^4)\)

・片持ち梁、集中荷重
\(δ=PL^3/(3EI)\)

以上のように、たわみはスパンLの3乗で大きくなっていることがわかります。
例えばLが2倍になると、たわみは8倍にもなります。

対して曲げ応力はスパンと比例関係にあるため、スパンが2倍になれば曲げ応力も2倍です。

これらの式によって算出した値は最低限のものなので使用していて干渉することなく、また、不安を感じることのないようなたわみ量を設定しなければなりません。

こちらに簡単に計算できるウェブサイトがありますので、参照してみてください。

L字構造(柱と梁)

柱と梁で構成されている構造です。
柱も梁も片持ち構造の場合、梁で発生した曲げーモーメントが柱に作用してたわみが発生します。
柱のたわみによって梁に角度がつき、梁自身のたわみと合算されるので大きなたわみとなる場合があります。

L字構造(梁と梁)

梁同士で構成されている構造です。
荷重が作用する梁は曲げモーメントが生じ、次の梁にはねじりが発生します。
梁のねじりによって、荷重を受けている梁に角度がつき、梁自身のたわみと合算されるので大きなたわみとなる場合があります。
また、ねじりが生じている梁には、荷重によって曲げモーメントが生じ、この曲げモーメントによるたわみも生じます。

本当に考慮すべきは共振

これまではたわみに関する制限値について記載してきました。
このたわみが大きくなると構造物どうしが干渉したり、人に恐怖感を与えたりします。
これだけでも十分問題なのですが、もうひとつ大きな問題として構造体の固有値を低くすることがあります。
固有値が低くなると、地震などの振動によって共振が起こりやすくなります。
共振を起こすと、大きな荷重が作用することになって構造物が壊れてしまうことがあります。
そのようにならないためにも、適切なたわみになるように強度設計を行う必要があります。

まとめ

・たわみを制限している規格・規準には、建築基準法と鋼構造設計規準があります。
・機械設計におけるたわみは、鋼構造設計規準の値:1/250~1/300を目安にしましょう。
・応力は高くないが、たわみが大きく生じる構造があるので気を付けましょう。
・たわみを計算したら固有値も算出してみましょう。

地震の振動数に関する資料は、検索してもこれといったものが見当たりませんが、概ね10Hz付近です。
よって、固有値20Hz以上の機械構造物であれば、地震による共振の可能性は低いと言えるでしょう。

最後までお読みくださり、ありがとうございました。

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