今回は機械設計において、設備や装置の故障をどこまで想定する必要があるのかについて書いてみます。
この記事は、安全設計や信頼性設計について悩んでいる設計初心者の方や中堅の方に参考にしていただければと思います。
例えば、ある設備で自走台車が停止センサーの故障によって終端で止まらなかったとしましょう。
その場合を想定して、オーバーランセンサーを設けてそれで停止させるとします。
これは1回の故障を想定して、問題なく台車を停止させていることになります。
それでは、オーバーランセンサーも故障した場合はどうなるのでしょうか。
またさらにセンサーを設けますか?
それともメカストッパーを付けて、それで物理的に強引に停止さることにしましょうか。
じゃあ、衝撃が大きすぎてメカストッパーが吹っ飛んでしまったらどうでしょう。
このように、対策したことに対して次から次へと故障を想定すると終わりがなく、設計の時間ばかりが増加し、いろんな部品が必要になって経済的にも無駄が多く効率がよくありません。
このような場合、どのように考えて設計を進めていけばよいのか、そんな考えについて書いてみます。
安全性と信頼性について
これらの違いについて、きちんと説明できるようにしましょう。
安全性とは
人に危害が及ばないようにすることと、設備や装置が損傷することがないようのすることです。
例えば、エレベーターを吊っているワイヤーロープが切れてしまった場合。
エレベーターには速度を検知する装置があって、その装置が異常を検知すると急ブレーキをかけてエレベーターを停止させるようになっています。
また、エレベーターが底まで落ちてしまったとしても、底の部分にバネを設置していて落下の衝撃を和らげるようにしています。
このように人命を守るために、何重もの安全装置を備えています。
信頼性とは
設備や装置が故障などして停止することなく、機能や性能を失うことなく、または一部の機能を失ったとしても働くようにすることです。
例えば、重要なデータを保存してるコンピュータがあり、これが故障したらデータがすべて無くなってしまう場合。
バックアップ用のコンピュータを用意しますよね。
このように同じものを2台、2系統用意することを冗長化といいます。
多重故障の想定
それでは、故障をどこまで想定して設計すればよいのでしょうか。
安全性を考慮した場合
安全性については、どんな状況も想定することが理想です。
この状況は絶対ない、と言い切れるまで対策する必要があります。
安全のために、設備や装置の危険の元をすべて停止させればよいのです。
安全性を優先し、信頼性を犠牲にすることも必要です。
しかし、原子力発電所のように自然災害を想定した場合、絶対にこの状況はないと言い切れる境界はありません。
数百年、数千年に一度の地震を想定すればよいのでしょうか。
数万年、数千万年まで想定する必要があるでしょうか。
そもそも、地震と津波だけでよいのでしょうか。
隕石やミサイルとかが衝突した場合、それは想定外でよいのでしょうか。
どこかで折り合いをつける必要があります。
信頼性を考慮した場合
一般的な考えとして、2重故障は想定しません。
設備や装置の重要性によって、2重故障まで想定する場合もありますが、そこまでで十分だと考えます。
最初の例で、台車の停止センサー故障について書きました。
その対策として、オーバーランセンサーを設けたことで対策は十分です。
しかし、オーバーランセンサーが故障した場合でも、この故障を検知できる対策があります。
詳しくはこちらを参照ください。
まとめ
機械設備や装置の故障について、どこまで想定する必要があるのかについてご紹介しました。
これが絶対の正解というわけではありませんが、一般的な考えとして安全に関しては、可能な限り想定します。
特に人命に対しては、何があっても守るように設計します。
信頼性に関しては、1故障、または2重故障までが、時間的および経済的に妥当なところだと言えるでしょう。
最後まで、お読みくださりありがとうございました。