技術士第二次試験において、多面的な観点から課題を3つ挙げさせてその内容について論じさせる問題があります。
その問題は、回答用紙3枚を使って論じさせる最も長い論文です。
ほとんどの技術部門でこのような問題内容です。
いきなり「多面的な観点からの課題」なんて言われても、どー答えればいいのってみなさん感じられると思います。
あまりに抽象的な質問なので、何を問われているのかもわかりづらいと思います。
というわけで、今回はこの「多面的な観点からの課題」について、どう解釈して回答したらよいのかについてご説明したいと思います。
この記事は、技術士第二次試験に向けて勉強に取組み始めた方や、主要なキーワードは覚えたのでいよいよ論文作成練習を始めようとされている方に向けてお届けしたいと思います。
それではどうぞ。
機械技術に関する観点
まず観点という言い方が難しいですね。
観点とは、どこから見ているのかっていう意味です。
どことは会社や自宅、トイレなどの場所のことではありません。
機械技術の観点なので、機械技術のどの位置なのかです。
機械技術の位置とはなんのことか。
ここから解釈を問題によって変える必要がありますが、モノづくりの工程を位置と捉えます。
つまり、機械技術の各工程から考えることを、多面的な観点から考えると捉えるのです。
そうすることで、幅広い視野から論じることができます。
モノづくりの一般的な工程を以下に列挙してみます。
①設計
②製造
③検査
④運転
⑤保守
そして、各工程ではいろんなことを考慮して作業を進めていきます。
一例として、各工程における基本方針とその対策を以下の表にまとめます。
№ | 工程 | 基本的な考慮 | 対策 |
---|---|---|---|
1 | 設計 | 品質、コスト、リードタイム | 安全性、信頼性、FMEA、FTA、フロントロ-ディング、コンカレントエンジニアリング |
2 | 製造 | 材料調達、製造加工方法、組立調整方法 | ジャストインタイム方式、セル生産方式、設計フィードバック |
3 | 検査 | 規格基準検査、検査方法 | 設計フィードバック |
4 | 運転 | 処理能力、不具合情報 | 設計フィードバック |
5 | 保守 | 製品寿命、耐久性、不具合情報 | 設計フィードバック |
上表で示している通り、基本的な考慮は各工程で異なる内容です。
しかし、対策では設計に対するフィードバックが全てに含まれています。
つまり、設計は全ての工程に関与しなければいけないということを示しています。
機械以外の技術部門においても、概ね上表と同じ内容になるはずです。
各技術によって異なってくる内容は、製造ぐらいだと思います。
課題とは
ここで、課題と問題という意味について少し整理します。
技術士第二次試験ではこのように「考える」として理解しましょう。
課題とは、やらなければならないことです。
技術士第二次試験において、課題とは目的と解釈すると理解しやすいでしょう。
つまり、課題とはやらなければならないことなので、課題をすり替えることはできません。
ここが重要です。
そして、次に「問題」についてご説明します。
問題とは
問題とは課題の障害になっていることです。
具体例として、材料の塊を粒状にすることを課題とします。
そこで粉砕機を採用することで検討してみます。
粉砕機は塊を砕いて粒状にすることができます。
これが、粉砕機に与えられた役割で課題と一致しています。
そして、そこに問題があるとすると、塊が硬すぎて粉砕できないとか、粘土みたいに粘着性が高くてばらばらにならないとか、になります。
つまり、硬すぎること、または粘着性があることが問題です。
しかし、この問題は粉砕機を採用しなければ対処しなくていい問題にすることができます。
例えば、塊を液体にいったん溶かして、次に液体を蒸発させて固形物を析出させます。
その析出の際にできた粉を粒状にすれば、課題の粒にすることができます。
粉砕に変えて溶解析出に変えることで、新たな問題が生じることもあるでしょう。
しかし、その問題が粉砕の問題よりも容易に対処できるなら、溶解析出が適した方法になります。
つまり、問題はすり替えることができるのです。
宇宙戦艦ヤマトで考える
2199年、地球の人類はガミラス星からの遊星爆弾による放射能汚染のため滅亡の危機にありました。
この放射能汚染を除去するためには、地球から遠く離れたイスカンダル星に宇宙戦艦ヤマトでコスモクリーナーを取りに行く必要がありました。
しかし、途中にはガミラス星からの強敵がいて、簡単に取りに行くことはできません。
ここまでで課題は何でしょうか。
課題は、地球から遠く離れたイスカンダル星に宇宙戦艦ヤマトでコスモクリーナーを取りに行くことです。
ちょっと長いですね。
地球から遠く離れていることを「問題」としてしまいそうですが、これはすり替えできないので、「問題」にはできません。
問題は、ガミラス星の強敵です。
これはすり替えることができます。
戦わなければよいのです。
まとめ
機械技術の観点とは、モノづくりの工程と考えましょう。
課題とは、やらなければいけないことであり、すり替えできない目的のことです。
問題とは、課題を達成するための障害であり、すり替えできる障害のことです。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。