みなさんは、機能、性能、強度を意識して設計していますか?
機能、性能、強度とはどのような意味を持つのでしょうか。
機能とは、どういった特徴を持っているのかということです。
性能とは、特徴が発揮する成果がどれくらいかということです。
強度とは、その名の通りどれくらいの強さなのかということです。
まだ少しぼんやりした表現です。
これからできるだけわかりやすく、具体的にご説明したいと思います。
というわけで今回は、機器や部品などの機能、性能、強度について書いてみたいと思います。
そして設計をする際、こういったことを考えて設計する必要がありますよ、ということをご紹介してみます。
この記事の内容は、機械設計初心者や中堅技術者のみなさんにご参考にしていただければと思います。
それではどうぞ。
機能
まず、そもそも機械や部品に求められる機能とはなんなのでしょうか。
その答えは、どんな働きを求められているのか、ということです。
つまり機能とは、機械や部品がどのような働きを持っているのかということです。
自動車の機能について考えてみましょう。
自動車の機能
自動車にはたくさんの機能がありますが、主な機能は人や荷物を載せて運ぶことです。
視点を変えて単純な部品で、タイヤの機能を考えてみましょう。
タイヤの機能
タイヤの機能は、エンジンの回転力を地面に伝えて自動車を走らせたり、ブレーキをかけて止まることです。
タイヤの他の機能としては、路面の凹凸などによって発生する衝撃を吸収すること、及び自動車が滑らないでまっすぐ走ったり曲がったりできることなどがあります。
もっと単純な部品で、プレート、板材を考えてみましょう。
単純なプレートの機能
プレートなんて単純な部品すぎて、逆になんて答えればいいか迷っちゃうんじゃないでしょうか。
実際の設計では、プレートを用いる場面がたくさんあります。
いくつか例を示してみます。
・機器を床にアンカーボルトで固定するためのベースプレート
・高さや位置などを調整するためのシムプレート
・フレームなどを補強するためのリブプレート
・別々のフレームなどを接続するためのスプライスプレートやガセットプレート
上記で既に機能を書いちゃっています。
固定、調整、補強及び接続をさせるためにプレートを用いています。
この場合、プレートは使い方によって機能が変化しています。
つまり、設計者が使い方を決めてプレートを採用しているということです。
だから、機能について考えて設計しなければいけないということになるのです。
いろんな機器や部品が、なぜそこにあるのか。
その意味→働き→機能について考え、それらの機器や部品を組み合わせて全体を完成させるのが設計なのです。
意味がない部品を見つけたら、すぐに削除しましょう。
意味がない部品は、無駄な設計です。
設計者は、優れた製品を設計するために、仕様、コストと納期を守ることに全力で取り組みます。
それなのに、無駄な設計があったばっかりに、全ての努力が台無しになってしまいます。
というわけで、無駄な設計は設計者にとってこの上ない恥だと感じましょう。
理想論をいいますと、設計当初は機能を考えながら部品を構成するので無駄な設計はないでしょう。
しかし、試作、試験などの結果によって設計変更をすることがよくあります。
その際に、意味がなくなった部品ができることがあります。
そして、それをだれかに指摘されるまで気が付かないことがあるので注意しましょう。
性能
次に性能についてです。
性能とは、前述した機能がどれくらいの能力を持っているかということです。
性能は数値で表すことができます。
自動車では、人や荷物を運ぶ機能に対して、何人、荷物何kgまでを運べるという能力を性能といいます。
タイヤでは、エンジンの回転力をトルクで表し、何N・mまでの回転力を地面に伝えられるという能力を性能といいます。
プレートではどうでしょうか。
固定、補強及び接続の場合では、何kgのものを固定、補強及び接続できる能力を性能といいます。
調整の場合では、何mm単位で調整できる能力を性能といいます。
機能と性能の違いについて混乱してしまうことがよくありますが、数値で表したものが性能であると理解するとわかりやすいでしょう。
一般的には、数値を示さないで性能について説明している記事をよくみます。
それは、一般消費者の方は数値で言われても実感を持てないからです。
なので、具体的な「~と比較して」とか、「とても~です」とイメージで表現した方が伝わります。
それはそれでよいと考えます。
しかし、設計やモノづくりに携わっている技術者が性能について論じるときは、数値で表す必要があります。
性能について紹介する際に、よく使われる言葉を考えてみます。
簡単な性能を表す言葉について紹介します。
軽さ
質量で示します
静かさ
騒音(デシベルなど)で示します
速さ
速度や時間で示します
次に、複雑な性能を表す言葉について紹介します。
包丁などの切れやすさ
抵抗力や摩擦係数などで示します。
自動車の乗り心地
衝撃吸収力、振動や振幅などで示します。
映像画面の美しさ
画素数、明るさや鮮やかさなどで示します。
強度
最後に強度です。
これまでにも、強度計算に関する記事をいくつか書きました。
機械には、絶対に壊れてはいけない部分があります。
それは機能や安全に関わる部品や部材です。
ここで言う「壊れる」とは、機器が最大力を発揮した時や最大外力を受けた時に、構成している部品や部材が「致命的な変形」や「破断」することを言います。
致命的な変形とは、その変形によって他に悪い影響を及ぼしたり、変形させた力がなくなった後も元に戻らない変形のことです。
元に戻らない変形のことを、機械工学などでは塑性変形と言います。
ただし、弱い部分を作って、他の機器や部品の保護を目的としてわざと壊れる部品を設計する場合もあるので承知しておきましょう。
というわけで、一つ一つの部品や部材の強度が充分であることで、機械や設備の機能や安全が成立するのです。
だから強度は重要なのです。
改めて強度について説明します。
強度とは、許容できる力に対してどれくらい余裕を持っているのかを数値で表します。
許容できる力を表す方法は、荷重(N)、質量(kg)や応力(N/mm^2)などがあります。
または、安全率で示す場合もあります。
参考例を示すと、
許容荷重の場合
許容荷重:100N に対して、
実際に使用した場合の最大使用荷重:90N
などと表現します。
許容応力の場合
許容応力:1600N/mm^2 に対して、
最大発生応力:800N/mm^2
安全率の場合
安全率:6 に対して、
「最小引張強さ」を「最大発生応力」で除した値
これが実際の安全率として表現します。
以上のように、最大使用荷重や最大発生応力だけの数値では、いいのか悪いのか判断できません。
許容荷重や許容応力の数値と比較することで、強度が充分なのか不足しているのかが判断できます。
許容荷重については、製品メーカがカタログなどに示していることが多いです。
許容応力については、過去に記事にしていますのでこちらを参考にしてみてください。
まとめ
まず、機能、性能、強度なんていきなり聞かれても、すらすらと答えるのは意外と難しいのではないでしょうか。
でも機器や設備などの設計を行う際には、これらを意識する必要があります。
この3つが全てというわけではありません。
しかし、この3つを押さえていれば、設計としてはまず問題ないと言えるでしょう。
ちなみに、この3つ以外に何があるかというと、製作性、統一性や均一性などがあります。
他にも細かいことがありますが、機器や部品によって変わってきます。
なので、やはりこの3つを押さえることが非常に大事です。
設計において重要な機能、性能、強度についてご紹介しました。
機能とは
機器、部品や部材などの「働き」のことです。
性能とは
機能について「数値」で表すことです。
強度とは
許容に対してどれくらいの「余裕」があるのかないのかということです。
機能、性能及び強度の観点から、意味のない設計にならないように、先輩や上司、顧客から指摘されることがないように設計しましょう。
いかがでしたでしょうか。
うまく説明できましたでしょうか。
この記事が、みなさんの技術力向上に少しでもお役に立てれば幸いです。
おまけ話
有名なセリフに「見せてもらおうか、連邦軍のモビルスーツの性能とやらを」というのがあります。
これは、シャアがモビルスーツの操縦者だからかっこいいセリフになります。
シャアはモビルスーツどうしの戦闘を通して、相手モビルスーツの性能を知識、経験、五感によって、様々な機能の数値を推し量るという意味をこのセリフで表しています。
もしシャアが技術者であった場合、このセリフの意味は戦うことではなく、仕様書や計算書を見て確認するということを意味します。
シャアが書類を提出しろという素振りに合わせて、このセリフを言うシーンを想像すると、それはそれでかっこいいかもしれませんw
最後までお読みくださり、ありがとうございました。