メカストッパってみなさんどのように設計されていますでしょうか。
停止センサーが故障したとき、ブレーキが利かなくなったときなど移動物体を強制的に停止させるメカストッパです。
弱すぎないか、頑丈すぎないか。適切なメカストッパの設計ってどんなんでしょう。
今回は、私がメカストッパを設計する際に確認すべき項目を書いてみます。
この記事は、メカストッパの強度設計について悩んでいる方や、機械設計初心者の方に向けた内容です。
メカストッパの設計手順は以下のようになります。
設計条件
まずは諸条件を整理しましょう。
(1)移動物体の質量\((kg)\)
(2)速度\((m/sec)\)
(3)モータの最大トルク\((N/m)\)
(4)安全率・許容応力\((N/mm^2)\)
エネルギー保存の法則
最初にメカストッパの構造を概ね設定します。
例えば、メカストッパを鋼材のブロックにしてそこに当てて瞬間停止にする。
または、緩衝ゴムを設置して緩やかに止める。
いずれにしても、減速距離と時間があるのでそこから減速度を算出します。
緩衝ゴムのバネ定数は、カタログなどの資料を調べればわかります。
鋼材の場合は、フックの法則や梁のたわみ式からバネ定数を算出します。
フックの法則より
\(σ=ε・E\)
圧縮または引張応力:\(σ(N/mm^2)\)
ひずみ:\(ε=ΔL/L、\)
ヤング率:\(E(N/mm^2)\)
また、
\(σ=P/A=ΔL/L・E\)より
荷重:\(P(N)\)
断面積:\(A(mm^2)\)
よって、バネ定数:\(k\)は、
\(k=P/ΔL=A/L・E\)
となります。
片持ち梁のたわみ式より
\(δ=PL^3/(3EI)\)
荷重:\(P(N)\)
梁長さ:\(L(mm)\)
断面二次モーメント:\(I(mm^4)\)
よって、バネ定数:\(k\)は
\(k=P/δ=3EI/L^3\)
となります。
あとはエネルギー保存の法則より、
\(1/2・mv^2=1/2・kδ^2\)
ここから\(δ\)を求めます。これが減速距離になります。
速度は一定減速してゼロになると設定すると、減速時間が算出できます。
そうすると減速度が求められます。
主要部位の強度評価
減速度がわかれば、主要フレームや取り付けボルトなど、あとはいつもの強度計算をすればいいだけです。
設定した許容応力以下であれば、強度は問題なしといえます。
許容応力をいくらにするかが問題です。
短期許容応力にするか、または破断応力までもっていくか。
通常の長期許容応力は安全を見すぎかもしれません。
もちろん、実際の装置の使用状況や重要度によって安全率・許容応力を設定するので、一概に上記のようには言えません。
まとめ
メカストッパをゴム緩衝材などで設置した場合、緩やかに止められるので大きな減速度にはなりません。
よって、減速度による強度評価は大きな問題になることは少ないでしょう。
しかし、鋼材などでメカストッパを設置した場合、減速時間は0.01~0.001秒ということもあり得ます。
そうすると、減速度は大きな値になるので強度評価へも影響は大きなものとなります。
メカストッパは、これらのことに留意して設計しましょう。