技術士には、必要とされる能力がいくつかあります。
今回の記事は、その中で技術士に求められる能力をどのような経験を通して身に着ければよいのかについて書いてみたいと思います。
経験といっても大雑把なくくりですが、ご紹介したいことは、開発や研究、大型プロジェクトのマネージメントに携わらなければいけないとかそういうことではありません。
自分が担当している業務が、機器、装置や設備にどんな役割を果たしているのか、そしてそれらが社会にどういった貢献をしているのか、どのような人たちがかかわって製品が作り上げられているのかなど、仕事全体を通して意識して経験する必要があるのだということをご紹介したいと思います。
この記事は、技術士ってなんなのって思っておられる方、これから技術士を目指そうとしている方、技術士第二次試験の受験に必要な実務経験をどのように修習するのかを検討されている方に参考にしていただければと思います。
技術士とは
まず技術士とは何なのでしょうか。
端的に言うと高度な技術と高い技術者倫理を兼ね備えている技術者です。
そして、日本の科学技術分野における最高位の国家資格です。
詳しくはこちらを参照してください。
技術士に求められる能力とは
文部科学省のwebサイトには以下のように定義されています。
専門的学識
みなさんが専門としている技術部門の科目、例えば機械部門の機械設計では、機械工学に関する知識や、業界の規格、基準、法令などを理解していることです。
問題解決
業務では必ず大小にかかわらず問題があります。それらを的確に把握し、利害関係を明確にして合理的に解決、改善することです。
マネジメント
業務全体を見渡して、滞らないように運営することです。
評価
各段階における結果が妥当かどうか、このまま進めて最終的に目的を達成できるのか、どんな改善が必要なのかを評価することです。
コミュニケーション
利害関係者を調整する上で必要な意思疎通です。仕様書、指示書、要領書などを作成する能力も含みます。
リーダーシップ
目指すべきゴールを明確に示し、関係する人たちの利害を調整して業務が前に進むように行動することです。
技術者倫理
技術が何のために存在しているかを理解し、自分の利益、立場、状況を理由にして嘘をつかないことです。
技術者倫理に関連する事件について記事にしたことがありますので、こちらを参考にしてみてください。
技術士に求められる経験
技術者に求められる能力で紹介している内容は、勉強して知識としては身に着けられますが限定された範囲になります。
しかし、業務を通して経験したことは、後になってその状況を思い出したりすることで新たな気づきがあります。
例えば、大型設備の一部分のセンサーを付ける部品や、配管のサポートの設計をみなさんが担当することになったとした場合、そのような一部分の設計ではたいした経験はできないと思われるでしょうか。
そんなことはありません。
それらの部品設計から設備全体を理解することが可能です。
そしてそのように業務に取り組むことが重要なのです。
そうすることで、それらの部品が設備に対して、どのように機能、性能、安全性や信頼性に貢献しているかを理解できます。
それらの部品を通して、設計、製造、単品の検査、組立、設備全体の検査、運転、保守などを経験します。
そして、トラブルがあれば要因を列挙し、要因をひとつずつ潰し、原因を特定し、対策を立て、対策が妥当かどうか評価し、改造を実施し、想定通りの結果が得られることを確認します。
これら一連の内容を、技術士に求められる能力を意識して経験することが重要です。
大型プロジェクトであれば、数年をかけて一通り経験できるでしょう。
突発的なトラブル対応であれば、限定的な範囲の経験になりますが、それでも数カ月を要するでしょう。そして、改造後の経過観察も数週間は必要だと思います。
これらの経験を通して、技術士としての能力が培われます。技術士に求められる能力を意識していなくてもある程度培われるでしょう。
しかしながら、意識しているのとそうでないのでは、身につく技術力の深さ、視野の広さ、習得するスピードに違いがでることをみなさん容易に想像できると思います。
こういったことを十分経験するには、やはり数年はかかるだろうと思います。
なので、技術士第一次試験を合格してから4年の実務経験を必要とされるのは、概ね妥当な期間なのだと思います。
実務経験4年の重要性
4年の実務経験は、技術士第二次試験の受験申込書に記入する重要な内容です。
そしてその内容は、筆記試験を突破した後の口頭試験で必ず説明を求められます。
そこで、技術士の能力を意識した説明ができないと不合格です。
私が口頭試験に失敗した経験を書いた記事、こちらを参考にしてみてください。
受験申込書に記載する実務経験は、空欄がないように全て埋めましょう。
大型プロジェクト1件しか経験していなくても、その中でいろんな業務をしているはずです。駆動部設計、センサー配置設計、配管設計、サポート設計、架台設計、治工具類設計、強度計算、性能計算、計画設計、検討設計など。
それらを細分化して単独業務として記載すればよいでしょう。
多様な経験をしていると相手は見てくれます。
そして、その中で最も技術的に難しかった問題について解決した実績を「業務内容の詳細」に書きましょう。
まとめ
技術士に必要な経験は、技術士に少しでも興味があったり、技術士になりたいと志した時から積み上げることができます。
ただし、技術士に求められる能力というものを知り、意識して業務に取り組むことが重要です。
ぜひみなさんも意識して取り組んで、技術士になって活躍しましょう。